現在の状況と提案

 現在(2005年時点)、全国の新築住宅着工戸敷は年間110~120万戸であるが (人口約2億5千万人のアメリカですら、年間約130万戸)、 総人口の頭打ちもあり、今後、減少に向かうことは間違いない。 多量の住宅が新築される一方で、空家は全国で400万戸以上にのぽり、 東京都内でも60万戸以上の空家が発生しているといわれている。
 日本では住宅の建て換えサイクル、つまり住宅寿命は25~30年で、アメリカの半分、 ヨーロッパの3分の1以下である。これがどういうことかというと、家を建てる時に、 生育に最低50年以上かけた木材を使い、その半分の時間しか経過していない時点で、 家を丸ごとゴミにしてしまうということである。
 家を一軒建てる場合、現在は農地や山林でもない限り、ほとんどが、既存の建物を解体工事するところから始まる (更地で取得した場合も、その前に撤去工事が行われている)。
 まず、ここで大量の廃棄物が出され、次に、建築材料の生産から施工までの段階で順次ゴミが発生する。 廃棄物の量自体も大きな問題であるが、さらにこれを厄介なものにしているのが、 ここ20年ほどの間に爆発的に増えた、いわゆる新建材、化学物質系の原料を使った材料である。 分別が殆ど不可能な接着剤や塗料が多量に使用されているため、たとえ木造建築物であっても、 環境面から云えば化学物質系の工業製品と何ら変わるところはない。
 現在表面化してきているシックハウス問題、化学物質過敏症も、主に、ここに起因している。 ゴミとして見た場合、建築廃材は全産業の21%を占めているが、 現在大きな問題となっている不法投棄に限っていえば、実に全体の87%(もっと多いという説もある)に及ぶといわれ、 量質ともに処理方法が大きな問題となっている。 最近は分別解体の方向が強く出てきているものの、コストの負担元や処分先等の問題がある。
 現在、建売り住宅などでは、10年で上物(住宅)査定はゼロになる。中古住宅の場合、それ以降の建物は商品価値があると認められず、評価額は土地の価格のみ。 かえって更地のほうが評価が高いケースも珍しくない。
 これではいくら長持ちする良い家づくりがなされても、次々に建てては壊すという流れを変えることはできないであろう。 必要なのは、きらんと造られた、まともな家が正当な評価を受けられる「中古住宅市場」だと考える。 戦後の日本で、建てては壊される流れの中でいつの間にか消えてしまった経済システムを復活させたい。
 仮に、築20年、30年の住宅が新築時の40%、30%で取り引きされる市場が作られれば、 購入者は基本的には建物はそのままに、必要なリフォームを施してこれを使用することができる。
 例えば、築20年の中古住宅を坪単価30万円で購入し、坪当たり20万円をかけて改装するとする。 取得価格は坪当たり50万円となって、今後最低30年は立派に住むことか出来るはずである。 これで所有者が変わっても建物自体は2倍長生きし、全体の取得価格も下がってくる。 発生するゴミの総量も大幅に減るであろう。
 また建築業界にとっても、リフォーム市場の拡大は大きな意味を持っている。新築住宅戸数の減少によるパイの取り合いをして、ますます建物の寿命サイクルを短くする方向に向かうのか、 資源を長持ちさせ、そのための手入れ、リフォームを手掛けることによって生き残りを図るのかという選択を迫られることになろう。
 提案「西多摩の山・再生プロジェクトNo.4」で、木材価格を1.4倍にして、 家1軒あたり約100万円の負担増になったとしても、この中古住宅市場があれば、 新築住宅価格上昇分を十分支えていけるのではないかとした。