東京の木で家を造る会

 「東京の木で家を造る」ということが、最終的な目標ではない。
 東京だけでなく、日本全体の森林再生のために、何をしていくかということを考える必要がある。 その上で、地域に根ざした家造り、人作り、暮らしそのものの在りようを形作っていくことを始めなくてはならない。
 木材価格の問題にしても、もちろん、一朝一夕に解決できるものではないが、 まず、私たちが取り組んで一歩一歩実現させていくことだ。 そうやって少しずつ問題に立ち向かいながら、この東京でのシステム作りを進めていくことが肝要である。
 しかし同時に、全体の視野を常に失わないようにしないと、気が付いたら山を助けるのではなく、 亡ぼしていた、ということになりかねない。山を助けることは、必ずしも持ち主である林業家の直接的な利益になるとは限らない。勿論それが一致するなら、非常に喜ばしいことだが…。
 同じことは、製材業、工務店、設計、施主に対してもいえる。 単に、それぞれの利益を追求するということなら、その業界なり個人が取り組むべき問題であろう。 この会は、立場が異なり、場合によっては利害の対立もありえる五者が同じ土俵で、 同じ理念の下に活動するために結成したものであり、そもそも相当の忍耐努力を要する。 全員がすぐに目に見える成果を得ることは難しいが、長い目で見れば、 必ず、有形無形の財産を築いていけるはずだと信じている。
 私たちの活動は新しい試みとして、ある意味で注目を集めている。 全国で、次々にその地域での家造りが進められている。 それだけに、今「東京の木で家を造る会」の方向性が問われているのではないか。 どちらを向いて進んでいくのか、それが本当に東京の山のためになるのか…。
 この会は1人1人が学んでいく会であり、それぞれの努力を前提としている。 また、会が方針や活動を提供するのではなく、メンバーがそれらを作っていく会であるはずである。 会の活動が少しずつ浸透してきて、それなりに実績を上げ、着々と前進しているように見える。しかし、本当の意味での私たちのなすべき仕事には、まだ殆ど手が付けられていない。 肝心なのはこれからであり、やっとスタートラインについたばかりだと思っている。