リフォーム それでも、我が家を増改築しよう


 こんな話を聞きます。

 「今、築後30年の家に住んでいます。家族構成が変わったり、その他の理由で家を建て替えたいのですが、それ程、建物が傷んでいるとも思えず、 また、予算上の都合で、増改築にしようと考えました。しかし、どこに頼んでよいのかわからないので、取りあえず、住宅メーカーに相談してみました。早速、住宅メーカーの社員が建物の調査にきました。結論は、『この建物は寿命です。傷みか激しいのでこの際、建替えたほうが良い。増改築は新築より割高になり、お金を掛けた割には思い通りの建物にはなりません』と云う答え が返ってきました」
 

 本当にそうなのでしょうか。


建物調査は床下、天井裏にもぐらなければ分からない

 

 増改築の具体的内容、間取りの変更、内装の変更等の打合せに入る以前に、建物の調査が必要です。 ほんとうにこの建物が、この先数十年の耐久力があるのか。木材の寿命は大変長いもので、古民家で実証されている様に、 木材自体には問題はない。ただ、床下で湿気に依って腐っているか、白蟻に喰われているかが問題なのです。 これを調べるには床下にもぐって確認しなくてはなりません。

 一般的に建物の基本的調査は、
 1. 床下の木材の状況、通風湿り具合
 2. 屋根の雨漏りに依る木材の腐食
 3. 建物全体のゆがみ(傾き)
 の3点です。

 1.に関しては、
 全体的に土台及び柱の下端が腐っている時は、建物を一度持ち上げて土台、柱の下端を入れ替えることが必要で、 大掛かりな工事になり建替えた方が良いかもしれませんが、部分的な腐りの場合は、腐った場所のみを替えれば問題はありません。 但し、改築後の耐久力を考えた壌合、この際床下全体を防湿措置(例えば防湿コンクリートを打つ)を施工することが望ましいです。

 2.に関しては、
 それ程大きい問題ではありません。雨漏れした近くの梁、垂木が腐っている程度で、部分補修程度で済む場合が多いのです。

 3.に関しては、
 調査は簡単です。目で見て分かる場合もありますが、傾きが少ない場合は、柱に沿ってさげ振り(重りの付いた糸)をたらして調べます。 傾きが少ない場合はそのまま工事を進めても問題はないのですが、傾きが大きい場合は厄介な問題で、これを直すのは大掛かりな工事になり、 費用もかさみます。地盤沈下によりコンクリート基礎が下がり、建物が傾いている場合は、一度建物を持ち上げて、 基礎をやり替えなくてはならない場合もあり、その工事費だけで数百万円掛かってしまうのです。


設計・施工会社の側から見た増改築


 建物を建てる側から云うと、増改築は新築に比べると利益が上がりません。壊しながら造るため手間が掛かったり、 住まいながら造る時は、一度に造ることが出来ないので、一室一室仕上げていくため日数も掛かります。 建主さんが、毎日見ているので、いろいろな注文を出し、変更も多くなります。

 私も、増改築工事を数多く手掛けてきましたが、確かに、増改築はめんどうで、手間のかかる仕事です。 特に、建主さんが住まいながら工事する場合は、問題が多く、毎日、事務所に電話が掛かってきて、結局、現場につきっきりになったこともしばしばありました。 また、建物にとって水廻りは痛みが早くくるため、水場(風呂、台所、洗面所、トイレ等)を直すケースか多いのですが、 これも住まいなからの工事となると厄介で、その個所だけ最短日数で施工したり、仮設の台所、トイレ、浴室を設置しなくてはならないためです。

 と云うわけで、工務店にとっても、設計事務所にとっても、手間の掛かることだらけなのが増改築なのです。 そのため、まだ十分に耐久力のある建物でも、新築工事にしたいのが本音なのです。


設計者、施工者を決める

 次に、設計事務所、工務店選びに関する留意点です。我々が手掛けている木造の建物は柱、梁等の木組みに依る在来軸組工法と呼ばれているものですが、 この工法は木質系2×4工法や、コンクリートの建物に比べて、増改築がやり易い、と言われていますが、一概にそう言えるものではありません。 柱を一、二本抜いても、平常時、傾くことはありませんが、大きな地震が来た時が心配です。 一般に増改築工事は新築工事に比べて、技術的に大変難しい工事なのです。木造をよく知った設計者、施工者の知識が要求されます。 建主さんは、建築技術に関しては素人ですから、プロに一任するしかありません。そのため信頼出来る設計者、施工者選びが、新築工事以上に必要になってきます。


住まいながら工事をする

 

 建主さんにとって、工事期間中、別の所へ引っ越して仮住まいをすると、家賃が掛かるので、住まいながら工事をしたいと考えるものですが、 前述のような問題があり、私はお勧めしません。これは設計、施工側からの都合だけでなく、建主側にとっても、マイナス面が多いからです。 例えば、毎日職人が出入りして気が休まる時がなく、お茶のサービス(近年しなくなりました)のため、生活時間に制約を受ける等々。 精神的に相当の負担が掛かってくるからです。


最終の見積りでビックリする

 

 増改築の場合、工事終了後の追加工事の金額が想像以上にふくらみ、工務店とトラブルになる場合があります。 その原因は以下に記す二つのケースが主です。

 

 一つは、当初予想もしなかった工事による追加で、これは基本的調査が不十分であったか、あるいは、調査はしたが、気が付かなかったかのどちらかです。 例えば、床が微妙に傾いていたとか、天井裏の見にくい部分が腐っていたとか等々。

 

 二つ目は、例えば、当初、璧だけ直すつもりが、璧が新しくなったら、天井も汚く見えてきて、天井も追加工事で直すことになったといった場合です。 一つ一つの変更追加工事は、たいした金額ではなくても、ちりも積もれば山となる場合です。 資金繰りは、当初ゆとりを持って計画し、常に追加金額を把握していなければなりません。


されど増改築

 

 以上、増改築に関する問題点、マイナス面を列記してきましたが、だから増改築はお止めなさい、新築にしなさいと云うことではなく、 出来るだけ増改築をお勧めしたいのです。

 新築にするために、まだまだ使える木材をゴミにしてしまうのは忍びない。せっかく数十年住まって、風格が出てきた建物を壊すのはもったいないからです。 我々の会の新築の建物が、他に比ペ高いと言われるならば、それは数十年後の増改築に耐えうる建物を目指しているのも理由の一つです。

 柱のキズ、昔、自分が小学生だった頃の身長が印してある柱がある家。そんな建物で住まい続けるためにも、増改築にこだわりたいものです。 住まいは、何代にも渡って住まい続けていくものです。そのためにも、増改築はメンテナンスと共に建物にとっても、重要なリフレッシュであると言えます。

 杉浦干城 すぎうらたてき
一級建築士事務所WHAT