「旬伐り」の家づくりリポート(1)

 

 製材の風景。

 木を見ながら、一本一本丁寧に製材されていきます。

 生きた木の良さを引き出すための一手間です。


ステップ 1 現地見学

 

 対象になる山林で、林家が代々、心をこめて育て慈しんできた樹木を、その樹の生い立ちや、 植生の位置や日当たりなどから推測される個性を説明します。
 旬伐の家造りについての応募要項などの詳しい説明を実施します。

 

林家の声>
 「この場所に同じ時に植林をしても、今見ても分かるように、 幹が太いものや細いものがあり、太いからといって良いというわけでもありません。 細いものは目が詰まっているし、それに比べ太いものは目巾が広い。また、 伐ってからしかわかりませんが、木材には赤味と白太とあり、その色味が一本一本違います。 この場所は、沢沿いで水が豊富、日当たりもよくスギに適している場所で素性の良い素直な木に育っています。 いままで縁桁や大黒柱など特殊材を一本また一本と伐り出していました」 

 

林家 小澤順一郎さん談


ステップ 2 申込み

 

 旬伐の家造り希望者は、東京の木で家を造る会事務局に申込みます。


ステップ 3 労働者決定

 

 申込者(施主)の家造りの希望などを考慮して、東京の木で家を造る会事務局は、最適な設計事務所と工務店を推薦します。 施主に選んでもらった設計事務所、工務店に、林家、製材所が顔合わせを行い、 緊密に協力し合う家造りの協働活動がはじまります。
 旬伐の家造りは、このステップからハード(準備)とソフト(設計)に分けて進行します。


ステップ 4 選木・立木購入

 

 対象の樹木の中から、林家、製材所等の専門家のアドバイスのもとに、樹木を選び、購入します。 選んだ立木には、テープを巻いておきます。

 

選木例(2003年11月/Sさん)
杉  樹高 約30m 胸高 141cm
杉  樹高 約30m 胸高  95cm
杉  樹高 約30m 胸高  81cm
杉  樹高 約30m 胸高  83cm   合計 4本
※胸高とは、地面より胸の高さ辺の樹の円周。141cmでは直径約45cm。81cmでは約26cm。


ステップ 5 伐採・葉枯らし

 

 いよいよ伐採です。伐採の前に、その樹を育ててくれた山の神に対して、感謝と伐採の許し、 そして、安全な伐採を願い、お祓いと祈りを捧げます。

 倒す方向を見定めます。高さ30mもの樹を樹木の間にすっぽりと納めること。 途中で他の樹に引っ掛かってしまってはそれを引き離すのに大変な労力を要します。至難の業が求められます。

 チェーンソーを入れます。何回かに分け、微妙な伐る角度を整えます。山の空気が張りつめます。 大音響とともに、樹は狙った場所に倒れ込んでいきます。

  樹齢80年。その間、林家が代替わりし、 世界は大きく変化しました。生命80年の樹を、ひとのくらしに役立つ木として、それ以上の命の長さで使うこと。地球が、森林が望んでいる循環です。

 

<林家の声/究極のプレゼント>

 「立っている木を見て何を感じられたでしょうか。案外、材木としての実感はないものです。 ”この木をどう使うんだろう?” 考えてしまった方も多かったでしょう。 そう、実は何にでもなるんです。立っている木には無限の可能性かあります。 テーブルにも、椅子にも、シーソーにもなります。板にとって接げば扉もできます。 ”全部柱にしなくてもいい んだ” そう思われた方も。 もちろん、肝心のポジションに建てる「1本の柱」を選ぶことが一番正しいとは思いますが、 すべてを既製品的に使ってしまうのはもったいない。オーダーなんだから好きにやってください。 自分で選んだ木を存分に活かしてやって欲しい。そこまで踏み込めば今回のシステムは価値をもってくるでしょう。
 夢を見ることは楽しい。それが現実になればうれしい。考え方によってはですが、すごくぜいたくだと思いませんか? 木の家を建てる夢を持たれた皆様に、”東京の木で家を造る会が提案する究極のプレゼント”だと思います。
 この店の魚はうまい。秘訣は活き締めにした魚を使うこと。魚は最高の状態でまな板にのぽる。 少々高いが、いたしかたない。それだけの満足がある。冷蔵庫にあった魚を皿に盛って出すのとは違うのである。
さて、旬伐りである。まず素材は見ていただいたとおり。それを木が水を上げていない(休眠中)時期に伐って、 さらに葉枯らし(はがらし-伐ったまま山に数ヶ月置き、木の光合成を利用し乾燥させる知恵、 まさに活き締めにすること)をする。その意味は後でわかるだろう。春になると木はびっくりするほど軽くなる。 その時期が食べ頃である。具体的にどう美味しいのかって?柔らかなピンク色がきれい、かんなをかけた後のつやも違う。そして狂わない。 東京の木で家を造る会の板さんは腕がいい。きっとおいしく料理して<れるだろう。今から楽しみである。」

 

林家 小澤順一郎さん談



ステップ 6 搬出

 

 樹は麓に搬出します。伐った時よりも水分が減って、大分軽くなっています。 昔はそりで運ばれた樹も、いまでは林道からはトラックでの搬送です。

 


ステップ 7 製材・乾燥

 

 表面の皮を剥き、裸丸太にします。屋根葺き等に使われていた杉皮は、 今では用途が少なくなり、新しい資源としての活用法が求められています。

 製材所に運び込まれた樹は、乾燥場で自然乾燥をします。かつては乾燥にたっぷり時間をかけましたが、 いまでは必要最小限の時間での乾燥です。 木材を使用する部位に合わせて、 樹種やそれぞれの木固有の特性を確かめながら選んで、柱材、梁材、板材として製材します。

<製材所の声/製材を待つ木を思いながら>
「小澤家代々の愛情を受け、すくすくと真直ぐに育った山の樹は、伐った瞬間から「木」として新しい生命となり、 私たちの生命を守り続けるために場所を変え、姿を変えて生き続ける。 育て手と使い手の期待の中で、たくさんの夢をもった木が山から降りてくる。我々も心を引き締めて迎えなくては。」 
 
製材 浜中英治